私の癖を気付かせてくれたのは、井関先生。先生しか気付かなかったことなのに……。

 体が無意識に拒否反応を示し、私はその場から逃げたい気持ちで、走り出そうとしていた。

 その時、先輩が私の腕を掴んだ。

「先輩!?」

「これから、杏て呼んでいい?」

「え……」

 そして、先輩の顔が私に近づく。

「いやっ!」

 ドン! 私は先輩を突き飛ばし、全力で走り出した。

「杏!」

 先輩の大きな声が、長い廊下に響いた。

 息が切れる。どこを走っているのかわからなくなるくらい、校内を夢中で走った。