「井関先生ってば、私には厳しいんですよねぇ。まぁいつも、テストの点が悪いから仕方ないんですけどー」

 口ばかり達者に動くのに、先輩を見ることも出来ず、一点を見つめたまま……。

 私は誤魔化しながら話し終えると、ぷくぅと頬を膨らませた。

 くすっと先輩が笑う。

「え?」

「杏ちゃんって、そうやって頬膨らませるの癖なんだね」

「……」

「すごく可愛い」

「……」 

 イヤ……。

「杏ちゃん? どうしたの?」

「なんでも、ないです」

 ……イヤ……。

 すごく、イヤ……。