学校に着くと、玄関は静まり返っていた。
学校の外ではあんなに必死になって走っている生徒がたくさんいたのに、それが嘘のよう。
それでも、少し開いた下駄箱、片方だけ落ちた靴、今まで遅刻寸前の生徒が走り込んで来た様子がわかる。
カチャ。私は自分の下駄箱を開けた。
「?」
一度閉めて、もう一度開ける。
「ん?」
自分の下駄箱か再度、確認する。
2-B 篠田杏
うん、私の下駄箱に間違いないよね。中には、缶の紅茶と一枚のメモらしきものが入っていた。
「何これ」
「どうした?」
私の言葉に気付いた井関が寄ってくる。そして中を覗き込んだ。
「缶ジュースと手紙? 誰かの差し入れか?」
「差し入れされる心当たりは無いけど……」
でも、この紅茶は最近私がハマっている、アールグレイティー。
今時、缶の紅茶なんてコンビニやスーパーにも少なくなって、近所の自動販売機でしか売っていない。この缶紅茶もそろそろ無くなってしまうんじゃないかって思っていた。
実際、うちの近くにある会社名も聞いたことのない、怪しい自動販売機でしか見たことがない缶紅茶。私的には、かなりレアな物だった。
私がこのアールグレイを好きだと知っている人?
他にもこの紅茶を売っている所があるのかな?
そして一緒に入っていたメモらしきもの。
そこには……。
『From the one that loves you』
そう書いてあった。