「杏、おっはよぉー! 今日も早いねぇ、なんでかなぁ? んふふー」

 教室に着くと、からかうようにミカが寄って来た。

「『んふふー』って何よ、それ」

 ――そう、遅刻しなくなったのも、ミカが言うように笑うことが増えたのも、井関先生のおかげ。

 先生に会いたい。

 先生と話したい。

 そう思うようになって、私は変わったようだ。

 これはミカ談……だけど。

 私はそんなに変わったとは思わないんだけどね。

「恋する乙女って感じねぇ……ス・テ・キ」

「……あのねぇ」

 ほぅ……と、うっとりため息をつくように、ミカが言った。この状況にミカはずいぶん酔っている。まるでミカが恋している本人のようだ。

「良かった。杏がこういう気持ちを持ってくれて」

「うん」

「今日は杏の誕生日だもんね! 帰り泉屋行こうよ。なんでもご馳走しちゃうー!」

「あはは。ありがと」

 私もミカとこういう話が出来るようになって、嬉しいと思う。今まで、なんにも興味がなくて、無気力で、ミカはかなり心配してくれていたし……。