「そろそろチャイム鳴るぞ」

「はーい」

 急いで下駄箱に飛び込んでくる生徒が見える。以前の私の姿が思い出されて、なんだか微笑ましくも思えた。

 私も教室へ向かおうと、歩き出した。

「杏、誕生日おめでとう」

 後ろからの先生の声にドキンと大きく胸が鳴った。

「ありがとう」

 声が震える。これくらいのことなのに、こんなにも嬉しい。先生を見つめ私は笑顔で答えた。

 こういうタイミングで、こういう言葉をくれる、そんな井関先生が好き。
 多分……誰よりも……。

 この手紙とアールグレイをくれる、この人よりも、先生の言葉が一番嬉しい。