「今日も遅刻じゃないな、エライ、エライ」

 そう言いながら井関先生が、私の頭の上に手を置く。

「井関先生おはよー」

 先生とのこのやり取りも、毎日の日課になりつつある。

「手紙、なんか面白いこと書いてあったのか? 笑ってたけど」

「ハッピーバースデーって。これくらいの英語なら読めるのになぁって、笑ってたの」

「確かに、それくらい読めなきゃ大問題だ」

「もう、先生! 英語が出来ない深刻さには、私だって気付いてますから!」

 ぷくぅと、ふてくされたように頬を膨らませた。

 そしてまた、井関先生が笑う。

 この癖も、もう恥ずかしいとは思わなくなっていた。先生が気付かせてくれた癖。多分、他の人は気付いていない、私たちしか知らないこと。