はぁぁ!?

 くっ……くだらねぇ!

「そんなこと!?」

 てっきり私と同じ苗字の元カノと何かあったのかなって……。

 ちょっと興味が……あ、いや『名前で呼ぶな!』なんて、キツく言ってしまったこと、少し後悔までしてたのに……。

「あ~ぁ、もういいです! 下の名前でも、何とでも呼んでください!」

 ぷくぅと、私は頬を膨らませた。

 え? 何!? 井関って、クールで無口で、大人の男……そんなのが売りで、モテてるんじゃないの? なんだか拍子抜け。

 コンビニから学校までの数分の距離。

 まさかこんな話が聞けるなんて思わなかった。

 今までの井関の印象が変わる。井関の意外な一面。

「ぷぷっ……」

 思い出すと笑っちゃう。

 申し訳ないけど、そのくだらない名前のエピソード。

 堅苦しくて、いかにも真面目そうで、苦手だった井関が私の中で少し変わった瞬間。

 もう完璧遅刻。

 でも、ま、いっか。

「井関、走るよー」

 私は井関の前に出ると、笑顔で学校へ向けて走り出した。

 いつもとは違う、5月の朝。