2時間の補習が終わると、時計は12時を少し回っていた。お腹空いたはずだ。朝寝坊して、ご飯食べてないし。

「さーてと、帰るかな」

 先生は立ち上がると、教科書やプリントを集め始めた。

「え? 帰るの?」

 まだ仕事があるのかと思った。

「帰るよ、今日は部活もないし、補習だけだから」

 え……それって私のために来たってこと?

「……」

 どうしよう……嬉しいって思ってしまう……。先生に気付かれないようにそっと頬を手で覆った。

 暑い夏休み。わざわざきっちり制服を着て学校に来るなんて、前の私なら面倒だと拒んだかもしれない。でもこうやって渋々でも来るのは、井関先生に会いたいと思ってしまう自分が居るから。

 そんなふうには思いたくない……先生を好きなんて、信じたくない……。そう思っていたけど、先生に会えない1ヵ月半の夏休みが今の私には長く感じてしまう。

 夏休み前に気付いてしまった自分の気持ち……。井関先生の所に毎日通うことが当たり前になっていて、1日でも会えないと、なんだか淋しいとまで感じるようになっていた。本当は面倒だと感じるこの補習も、私にはラッキーだった。

 でも補習も残すは3日。

 新学期まで、井関先生に会えなくなるんだ……。