「このテスト結果を見ると、杏の苦手なところは……」
井関先生は私のテスト用紙を見ながら、話し始めた。
今日は薄いブルーのストライプのワイシャツを着ている。ネクタイはしていない。クールビズというやつか。外から来て、まだ暑さが治まらないのか、パタパタと首元から風を送る姿が、かえって爽やかに見える。
「……先生って、青が好きなの?」
「え?」
補習とは関係ないことを問われ、眼鏡越しの目が大きく開いた。
「なに突然? んまぁ、一番好きな色だけど」
「青、似合ってるよ」
私は笑いながらそう言った。
驚いたような、井関先生の一瞬の沈黙。
「ばーか」
そう言うと、持っていたプリントで、私の頭をポコっと叩いた。