ミーン ミーン……ミーン ミーン……。

 蝉の声がうるさいくらいに感じる、8月の始め。陽射しが強くなる前の午前中。私は学校に来ていた。

 校内は生徒たちもほとんど居ない。部活をしている生徒たちの声が遠くに聞こえる。外から入ると、ひんやりした廊下の冷たい空気を気持ちよく感じながら、私は職員室に向かった。

 そう――私は補習の1人である。

 はあぁぁ。

 せっかくの夏休みなのに……大きくため息をついた。

「朝からため息かぁ?」

 ドキン。

 振り返ると、井関先生が立っていた。

「なんだ井関先生か、ビックリするじゃん」

 井関先生だからビックリしたんだけど。

「涼しくしてあるから、さっさと始めるぞー」

「はーい、わぁホント涼しい! ラッキー」

 私は相談室と書かれた部屋に飛び込んだ。