井関と登校かぁ……ウザイ。
井関のファンクラブの連中に見付かったら後が恐い。
ファンクラブといっても、ご存知の通り本当のファンクラブではない。
井関好きな生徒が集まり、キャーキャー騒いでいるだけの、うるさい連中。学年関係なく井関のいるところに集まって、井関のことを根掘り葉掘り聞いているのをみたことがある。ただ騒がしいだけだが、何故だかその威力はジャ〇ーズ並だ。
それでも、むしろ夢中になれることがあるだけ尊敬してしまう。
そんな井関ファンが誰も居ないことを確認するように、キョロキョロ辺りを見回した。もう遅刻の時間だもん井関ファンがいるわけないか。そう思い胸をなでおろす。
プルル。ポケットのスマホが鳴った。LINEの着信音。
【杏、まだ~? ホームルーム始まっちゃうよー】
ミカからだ。
この時間、この内容のメッセージも毎朝のこと。
【今、向かってるー】
一言だけの返事を返す。
まさか井関と登校なんて、ミカに言ったら怒るだろうなぁ。
ずいぶん先を行く井関をチラッと見た。ミカも井関ファンの1人だし、ややこしい事になるのは面倒だしな。
私は画面をOFFにすると、スマホをポケットに押し込んだ。