それくらい、あの英語の手紙の内容は、顔が火照り出してしまうくらいの言葉が並べられていたから。でもミカには、手紙の話は先輩にしないように口止めしていた。
なんとなく、あの手紙のことは誰にも話したくないと思ってしまっていたから。
「先輩は、英語が得意って聞いたんですけど」
「得意っていうか、少し海外に住んでいたからね。日常会話くらいは出来るけど。なんで?」
「あ……いえ、私が余りにも英語が出来ないから、英語が出来る人がすごいなぁって。今も英語のテストの点が悪すぎるって、担任に呼ばれてたところだし……」
「あははは、だから遅くなったんだね。担任て誰だっけ?」
先輩の大きな目が、笑顔で細まる。整い過ぎた顔に、まだ慣れない。
「井関先生です」
「――井関……そう。英語くらいなら、僕が教えるよ」
「ありがとうございます」
先輩は一拍置くように飲み物を飲むと、私を見つめた。
「ねぇ杏ちゃん、僕と付き合わない?」