「杏、何飲む? なんか買ってくるよ」

「ありがと、じゃあアイスティーがいいな」

「オッケー、じゃあリク行こう」

 えっ……えっ!?

 ミカはそう言うと、リク先輩の手を引き席を立った。

 ちょっとー! いきなり2人にしないでよー!

 階段を降りかけた所でミカは振り向くと、私に笑顔で手を振った。

 もう、ミカめ~!

 急に2人きりにされ、突然のように起こる店内の騒がしい声が私を緊張させた。私は下を向いたまま……。

「前にさ、ミカちゃんと一緒にリクの教室来たことあったでしょ?」

 ミカたちが居なくなると、入江先輩が話し出した。

「えっ、あぁ、はい……」

 私は驚いて、顔を上げる。

「あの時、杏ちゃん見て可愛い子だなって思ってさ」

「はぁ……ありがとうございます」

 一気に体温が上がった気がした。

「そんなに硬くならないでよ」

 入江先輩が、やわらかく笑う。

「はい……」

 だって、そんなこと言われ慣れてないんだもん……『可愛い』なんてサラリと言うその言い方が、あの手紙の差出人なのかもと思わせる。