ホームルームを残すだけとなった午後の教室は相変わらずの騒がしさだ。
この後、部活に行くための準備をする生徒。お菓子を食べながら、恋話で盛り上がる生徒、様々だ。まだ学校が終わったわけじゃないのに自由な生徒を見て、なんだかため息が出た。
静かにしろというように大きなドアの音をさせ、担任の井関が入って来た。
「ほら、席着けー。ちょっと遅くなってしまったが、この時間を借りて英語のテストを返す。点数悪かった者は、夏休み補習を受けてもらうからなー」
「えー」
みんなからのブーイング。
「な。缶、握り締めている、杏」
例のアールグレイを握り締めていた私に、みんなが一斉に振り返る。
「アハハハハ」
みんなからの笑い声。ピキッと眉間にシワが寄った。
なによーっ! 私が補習なんだってバラしてんじゃん!
井関やっぱ、ムカつく~!
私が英語出来ないことは、みんな知っていることだけどさ。あえて言わなくたっていいじゃんよ!
まだ笑い声が教室に響いている。