「あの人が入江先輩……」
「杏に興味があるみたいなんだよね。それにね入江先輩、海外で暮らしてたことがあったらしくて、かなり英語が出来るみたい」
それを聞いて、ミカが何を言いたいのかがわかった。
「あの英語の手紙は、入江先輩からじゃないか……って?」
「そう! だって、つながらない? 先輩が杏のことを聞いてきた時期と、手紙が届くようになった時期と、タイミングも同じだし」
「んー」
確かに同じくらいだよね……。
「でもさ、リク先輩に聞いてくるくらいなら、なんでアールグレイや手紙を下駄箱に入れたり、そんな回りくどいことしたんだろ? 直接言ってきてもいいはずだし」
「いきなりじゃ杏が警戒すると思ったんじゃない? リクに聞いてくるくらいだもん、いきなり告白もできないんじゃなかな? ねぇ、ねぇ、会ってみない?」
「はっ!?」
こういう時のミカの行動力の早さには、いつも驚かされる。
「だってぇ、杏も手紙の差出人には興味があるでしょう?」
「まぁね……」
だから毎日、井関に訳してもらっているわけだし。
「もし差出人が入江先輩なら、ずいぶん杏に惚れ込んでるってことでしょう? これは、このままにしておくのは、もったいないわよ!」
乗り気なのはミカの方で、それに、その入江先輩を手紙の差出人にしたいらしい。
私はため息混じりに、薄いブルーのグラスの水を口にふくんだ。なんだかわからない展開に、口がカラカラだ。
「リクに言えば、セッティングしてくれるから! んねっ!」
「う、うん……」
ミカの迫力に圧倒され、つい返事をしてしまっていた。