私とミカは、いつも来る甘味処の泉屋に来ていた。

 いつも降りるバス停の一つ前。細い路地を一本奥に入った、静かな場所に泉屋はある。並びには、落ち着いた雰囲気の食器屋さんと、ナチュラルテイストな服が並ぶリサイクルショップ。ここらへんは可愛い雑貨屋さんもたくさんあって、女性の姿を多く見かける。

 みんなが集まる駅前のファストフードもいいんだけど、うるさくて、私は長時間居られない。

 こういう甘味処や茶屋みたいな所は、私たちが毎日通うにはまだ早い気もするけど。

 お母さんに連れられて来て以来、私の落ち着ける場所になった。

 大通りの騒がしさが嘘のような、静かな場所。

 厚く重みのある木の引き戸を開け、のれんをくぐると、あまり広くない店内に5つ程のテーブルとカウンター。木のテーブルに、木の椅子。椅子の上には和柄の座布団。和紙で作られた丸いランプシェードから夜は温かみのある橙色の明かりが漏れる。

 注文するとテーブルに敷いてくれる、一つ一つ違った柄のランチョンマット。店内は和風で統一されている。

 窓から見る大きな木も、季節ごとに色を変える。

 先程から雨足が強くなったせいか、ピタリと閉められた窓で外の物音は消され、詞のない音楽が店内を包む。この雰囲気と静けさが私には合っているのかもしれない。すごく落ち着く。

「昨日ね、リクに聞いたんだけど」

 大振りの抹茶パフェを食べながら、ミカが話し始めた。

 私は抹茶のシフォンケーキに紅茶。お店の感じが純和風だからと、和菓子ばかりじゃないところも、ありがたい。