「ねぇ先生、海見に行こう。前に連れてってくれた、あの場所」

 先生は微笑みながら、私の手を握った。

 夕暮れが近付く。

 泉屋の前に立つ、大きな木も枝ぶりを変える。もうすぐ秋。

 先生を想って泣いた時も、笑った時も、私はここにいた。

 前を歩く先生の、大きな手が私の手を引く。

 そして時折振り返り、また微笑む。

 幾度も、めぐる季節をあなたと過ごしていきたい――――。