「リク先輩、相変わらず忙しそうだね」

「うーん、まぁねぇ。いつも生徒たちのことばかり考えてるかな」

 リク先輩は今、サッカーで有名な高校のサッカー部の監督をしているらしい。親友の旦那さんのことなのに、私は相変わらずサッカーのことはまったくわからずにいる。

「杏てば、相変わらず紅茶飲んでるんだね」

 ミカが笑う。

「ん、こればっかりだねー」

 そう言いながらアイスティーのストローをくるっと回すと、涼しげな氷の音が鳴った。

 ミカとはちょくちょくメールはしてるけど、会える時間は少なくなっていた。

「杏はどう? 仕事忙しいの?」

「うん、覚えること多くてねぇ」

 調理師専門学校を卒業して、私は今、イタリア料理店で働いている。仕事として料理を作ることに、まだ慣れない。

「自分の店、いつもてるかねぇ」

 はぁ……と、私はため息をついた。

「いいじゃなぁい、夢があってさぁ」

「まぁね」