『Dear 井関先生』

 私はまだまだ子供で、先生のようにクールに振る舞えなくて、いつも、いつも、先生に迷惑をかけてきたよね。

 怒らせたことも何度もあった。

 気持ちと態度がついていかなくて、先生に婚約者が居ると知った時、私はすべてがどうでもよくなってしまった……。

 学校も

 自分の夢も

 友達も

 すべて――。

 先生を好きになるんじゃなかった。

 早く冷めてしまえばいい。

 嫌いになれたら楽なのに。

 いつもそう考えていた。

 でも、駄目だった。

 先生を嫌いになることなんて、できなかったよ。

 小さな虫が嫌いな先生も。

 甘いコーヒーが好きな先生も。

 泉屋で見た風景を先生も好きだと言ってくれたことも。

 私の癖を一番に見つけてくれたことも。

 あのアールグレイを美味しいと感じてくれたことも。

 すべてが、先生のすべてが、私には大切だから。

 先生を失いたくない。

 先生、私はもう大丈夫だから。

 この間の英語の追試も、きっと満点だよ。

 調理師になりたいって夢も頑張ってるから。

 いつか夢を叶えた私が先生の隣りに居られますように。

 この手紙を先生が読んでくれる日がくると

 信じて――。


 From the one that loves you