「……ミカ……」

「杏おはよ、来たね」

 そう言うとミカは、今までの言葉が嘘のようにニッコリと満面の笑みを見せた。

「ミカ……ありがと」

「私、あーいうの大っ嫌いなんだよねぇ」

 いつものミカの顔つきに私はホッと笑った。

 いつも、いつも思う。ミカがいてくれてよかったと――。

「杏、よく3年の下駄箱に迷わず来たね。てっきり2年の下駄箱に行っちゃうかと思ったよ」

「あ、うん、さっき間違えて2年の方に行ってたよ」

「なんだー。やっぱり間違ったんだ」

 ミカは「あはは」と大きく笑った。

 そうか……3年の下駄箱は職員室から一番遠くなるんだね。