「ちょっと来い!」
捕まれた腕を引っ張り上げられ、ズルズルと引きずられる。
「イヤ! やめてよ!」
「静かにしろ!」
「いや……んっ……!」
口を手で塞がれ、路地裏に引きずり込まれる。
「んー! んー!」
叫んでも、叫んでも、手で塞がれた口からは、言葉にならない声が漏れるだけ。そして、その声さえも激しくなる雨音に消された。
ガリッ!
「いてぇ!」
私は口を塞ぐ男の手を、思い切り噛んだ。
「てめぇ!」
バシッ!
「きゃあ!!……っ……」
ポタ……頬を叩かれ、唇が切れた。触れた手のひらは真っ赤な血で染まった。
殺される――!
赤い血を見て、恐怖が一気に増す。
「ほらぁ! 来いよ!」
座り込む私の髪を、グイッと引っ張ると、男はさっきより乱暴な力で私の腕を掴み上げた。
ガチャーン!!
ビール瓶が入った、積み上げられた幾つものケースに、1人の男が叩きつけられた。
瓶が割れ、砕け落ちた。