「それなのに、オレを見ようとしない! いつまでも、いつまでも、あんなオッサンを追い掛ける……」

「……あの写真……。学校中に貼られた、井関先生のあの写真は……」

 先輩の口元が、微かに上がった気がした。

「……そうだよ。あの写真を学校中に貼ったのは、オレだよ」

「どうして!?」

「あんな写真を見て、井関を追いかけている奴らは、どんな顔をするか見てみたかったんだよ」

「……先輩……」

「井関を好きだという奴の絶望的な顔、学校中の全員が、井関にガッカリする姿をね」

「……」

 悪魔のようなその見下すような笑い顔……この人は私を好きなんじゃない。
ただ、井関先生を困らせたかっただけ……。

「杏はどうだった? 他に女がいる男、それでも好きなの?」

“ソレデモ スキナノ?”あの手紙と同じ言葉……。

「……もう、やめて……」

「杏?」

「もうやめてよ! これ以上、先生を傷つけないで!」