「先輩! 私は何度も言ってる。私は先輩を好きにはなれない!」

「……」

「それなのに、先輩はそんな私と付き合っていて幸せなの!?」

「杏……」

「そんなの絶対におかしいよ!」

「……そんなにアイツがいいのか……」

「え?」

「そんなに、井関がいいのか!?」

 先輩が私の手を力強く掴み、声を荒げた。

「……痛っ……」

 私の手首を掴む先輩の手に、だんだんと力が増す。

「は……なしてっ……」

 すごい力……振りほどけない……。

「どこがいいんだ! あんなオッサン……」

「……先輩!?」

 何言って……。

「腹が立つんだよ! あんなオッサンより、オレのがいいだろ!」

 ギリッ……掴まれた腕がキシむ音がした。

「痛い!」