「ある意味ストーカーだよ。なんだかキモイ……」

 私はふてくされるように、ぷくぅと頬を膨らませた。

「ぷぷっ」そんな私を見て井関が笑った。

「なにっ!?」

 怒ったように聞き返す。

「杏て、ふてくされた時、頬を膨らませるの癖?」

「え?」

「何度か見たことあるからさ」

「……」

 今まで誰からも言われたことはなかった。

 自分でも気付かなかった癖……。

 それを井関は……。

「わかんないっ、そんなの!」

 私は否定したい気持ちと、驚きとで声を荒らげてしまっていた。

 自分の知らなかった癖。まるで裸を見られてしまったように恥ずかしい気持ちになり、うつむいた。

「まぁな、癖なんて案外自分じゃ気付かないもんだよ」

 井関はそう笑いながら、細身の眼鏡をくいっと上げ、もう一度手紙に目をやった。

 なんだろ……これ……。

 井関とあんまり話したことがなかったから、やりにくいっていうか……ペースを乱される。

「手紙……訳してくれて、ありがと……」

「あぁ」

 なんだか落ち着かなくて、カタカタと靴を鳴らしてしまう。

 私は井関から手紙を奪うように取ると、急いで職員室を出た。