あの時ミカは……。

「どうしてそこまで、入江先輩が杏にこだわるのか分からない」

 そう言っていた。

 たとえ入江先輩が、とてつもなく執着心の強い人だったとしても、どうしてそれが私だったのか……。会ったことも、話したこともない。好かれるほど見た目が良いわけでもない。私にはまったく執着される覚えがなかったのだから。

 ただ、このままではいけない。このままでは……。

 そればかりを考えていた。

 以前のように朝の時間がダルくって、学校に行きたくない気持ちは日に日に増すようだった。

 朝ギリギリの時間に学校に着くと、いつものようにバタバタと騒がしい生徒の波。

「はぁ……」

 それを見て、私は一つため息をついた。

 自分の下駄箱に手を掛けた時、いつもの騒がしさと少し違うことに気付いた。

「あっちの掲示板にもあったらしいよー」

「えー!? 見に行こう」

「ねー! 職員室前にもだってー!」

 遅刻寸前で来た生徒ではなく、あきらかに、既に学校に来ていたであろう生徒たちが校内を走り回っている。

「?」

 なんの騒ぎ?