「杏が先生のことを好きでいてよかったよ。安心した」
「うん……」
「でも、今のそんな杏でどうすんの? せっかくやりたいことも見付かって、先生とも上手くいっていたのに……。杏から先生を避けるようじゃダメじゃん」
「……想い続けてもダメなのかなって。婚約者が居るんじゃ、もう……。だったら嫌いになれたら楽なのにって……」
私なんて相手にしなくていい、嫌われてしまった方がいい、そう思っていた。
たとえそれが一生徒だったとしても、私に関わらなくていい、そう思った。
「本当にそれでいいの?」
「え……」
ミカがココアをもう一口飲むと、はぁとため息をついた。
「今あきらめたら、本当に終わりになっちゃうよ? 私たちが3年になったら担任は代わる。そしたら今よりもっと、井関先生との接点は無くなる」
「……うん……」
「先生に彼女がいようと、婚約者がいようと、好きな気持ちはかえられない。私なら時間がもったいなーいって、さっさと違う人見付けちゃうけどねぇ」
くすっ。ミカらしい言葉。
「人を好きになって、自分が強くなれるなら、想い続ける恋もアリかなって。いつかその人以上の相手が見つかるまで想い続けていたいって」