私は今までのことをミカに話した。

 先生とのキス。入江先輩と付き合わなければいけなくなったこと。先生の婚約者のこと。

 今までのすべてを……。

 そして今の自分の気持ちを。

 自惚れでもよかった。先生は私を好きなのかもしれない……そう思っていたかった。

 でも、それさえも思えなくなってしまった今……。

「ちょっと! それ脅迫じゃない! そんなことで入江先輩と付き合わなきゃいけなくなったの!?」

「……」

「あの男~!」

 ギリギリとミカの歯がきしむ音が聞こえるようだった。ミカの怒りが伝わってくる。

「私を怒らせたらどうなるか見せてやるんだから! んふぁはははは」

「……ミカ、その悪魔みたいな笑い……」

 可愛い見た目に似合わず、ミカはこうだからなぁ。

「……だから、私にも話せなかったんだね」

「ミカには話しておけばよかったんだ。そうしたらきっと、こんな苦しい思いも和らいだかもしれない。解決策なんてなくても平常心は保てたかもしれない」

「それくらい、先生を守りたかったってことでしょ? 先生が大切だから、先生のために誰にも話せないって」

「……ミカ、ありがと。ごめんね」