みんなが私のウワサをしているのは聞こえていた。
心配? ううん、違う。話のネタにしたいだけ。
私の気持ちはすべてにマイナスだった。人の優しさも、そう受け取れずに……。
3年の入江先輩は卒業が近くなり、週に一度くらいしか学校に来なくなっていた。私はどこかホッとしていた。毎日のメールや電話はあっても、顔を会わせずに済むだけ心に余裕ができる気がしていた。
それだけ私にとって入江先輩の存在は、苦しいものになっていた。
『いつまでも先輩に縛られていなくていいんじゃない?』
『別にもう、先生のことバレてもいいんじゃないの?』
『先生が学校をクビになろうと、どうなろうと、私には知ったことじゃない……』
私の中の悪魔が囁く。
『本当にそれでいいの?』
『先生を失っても?』
『先生と二度と会えなくなってしまっても?』
私の中にまだ少し理性はあって、先生が居なくなってしまう……先生を傷つけてしまう……その恐怖を感じる気持ちは残っていた。
そこまで出来るほど、私は大人じゃない。
だから……。
今日の英語のテストを白紙で出した。
これが私の精一杯の、先生への反発。