【杏、始まっちゃうよー】

 前はよく、ミカからのメールがあったっけ。それも今は無い。

 ミカはまだ怒っているんだろう。学校で会っても会話することも目を合せることもない。

 その原因は私が何も話せずにいるからだって分かってる。

「はぁ」大きくため息をついた。

 かったるくって、少し動くだけでもため息が漏れた。

「今日もサボっちゃおうかなぁ……」

 不登校になるって、こんなことがきっかけなのかもしれないなぁ……。

「杏」

 その時、後ろから聞き覚えのある声。

「……先生」 

 そこに井関先生が立っていた。以前もこんなことがあった気がする。

「遅刻だぞ、急げよ」

 担任らしい言葉。

 私は無視して、コンビニを出た。

「杏!」

 学校とは逆方向へ行こうとしていた私の腕を、先生が掴んだ。

「触らないで!」

 私は先生の手を振り払った。

「……」

 初めて見る先生の、驚いたような、傷ついたような顔。言葉も無い。