「生徒にだって人権ってあるんですよ!」
その言葉に反応したのか、先生がゆっくりと振り返る。
「なんだ、それ?」
「この間、見たんですよ」
「先輩、やめて……」
止めても先輩は話を続けた。
聞きたくない、あの時のことは……。
「先輩っ!」
「先生と相合傘してる女の人。髪が長くて美人さんでしたねぇ~」
聞きたくない、先生の言葉を。
「あぁ」
くすっと先生が笑った。
「あの人は“彼女”じゃないんだ」
その言葉に一瞬、私はホッとした。
でも
「彼女は……」
先生の口から出た言葉がまた私の心を打ち砕いた。
「婚約者だから」