「おまえ何やってんだ? 料理の勉強がしたいって、羽山先生にお願いして部に入れてもらったんだろ」

「……はい」

「何ボケっとしてんだ? みんなに迷惑かけてるんだぞ?」

「……」

 はぁ……と、先生はもう一つ大きくため息をついた。

「……彼が出来たと、浮かれていたんじゃないのか」

「!」

 ドン!と殴られたような衝撃が体中に響いた。

 私は何も言わず、保健室を飛び出し、長い廊下を夢中で走った。

 放課後の教室には誰も居ない。私は崩れるように座り込んだ。

「……うっ……」

 先生に一番触れて欲しくなかったこと。一番言われたくなかったことだった。

 先輩は彼なんかじゃない! 好きなのは先生なのに! そう言いたかった。

 そう叫んでしまいたかった――。

「……うっ……う……」

 私は手で口を押さえ、誰にも届かないよう声を殺して泣いた。