私と入江先輩のウワサはもう、あの時ほどではなくなっていた。私にとって、ウワサが和らいだだけ、ありがたい冬休みだったのかもしれない。
リク先輩から聞いて知っていたとはいえ、改めて驚いたのは、入江先輩が相当有名人だということ。先輩と歩いていて、他校の生徒が何人も声をかけてきたりする。指をさされ何かウワサされることもあった。まるで私まで有名人。
先輩の彼女になるヒトは優越感だろう。あ……今、私がそうなんだっけ?
それくらい私には実感がなかった。優越感なんてこれっぽっちも無かった。そんなもの、欲しいなんて思いもしない。こんな不本意なことを受け入れなければいけないなんて……。
いつも、いつも、先輩と一緒にいる時でさえ、そんなことを考えていた。