「もしかしたら、この手紙から愛が生まれちゃうかもしれないよね! そしたら晴れて杏も彼氏ゲットよー!」

 キャッキャッと嬉しそうに話すミカ。そんなミカは、1つ上の彼氏もち。

 だから私にも、早く彼を作れといつも急かす。多分、恋する気持ちを共有したいのだろう。私は面倒だから彼なんかいらないのに。

 これがいつもの、私たちのやりとり。

 可愛いミカだけど、私にはいつも説教。このアンバランスなとこが私は心地いい。

「こんな手紙、きっと何かの間違いだよ。それか、私をからかおうとしているのか……」

「まさかー」

 ミカは残念そうに眉を下げた。

 でもそんな私の言葉は、現実にはならなかったんだ。

 あの日から、毎日のように私の下駄箱に入ってくるアールグレイと手紙。

 缶のアールグレイ。内容の違う英語の手紙。

 そして最後にはいつも『From the one that loves you』―あなたを愛する者より―という言葉。

 誰からなのかわからない。毎日違う内容。英語の意味なんてわからない。

 ただ一つわかるのは、これは愛の言葉だということ。

『あなたを愛する者より』

 からかれているわけじゃないのだろう。

 あの時、井関が言ったように、これは私宛のラブレターなんだ。

 私がこの紅茶を好きだと、どうして知っているんですか?

 私のこと、あなたはどこまで知っているんですか?

 あなたはいったい誰なんですか?