数えきれない程の人の波。学園祭はまだまだ続く。
屋台を完売させてしまったうちのクラスは、生徒みんな自由行動になった。
空が夕焼けに染まる頃、私は少し残った片付けをするため、1人調理室に居た。
ミカはリク先輩と、みんなも残りわずかな学園祭を満喫しているのだろう。
「杏、お疲れさん」
「井関先生!」
「1人で片付けか? どこに行ったかと探したよ」
「あ……」
探した? 私を?
「せっかくの学園祭なんだから、みんなと見てくればいいじゃないか。もうそろそろ終わりだからどこも片付けに入っちゃってるけどな」
「うん、でも……」
「騒がしいのは嫌だって?」
くすくす。先生の言葉に私は笑った。
「ピンポン、こうやって眺めてるだけでお腹いっぱいです」
先生はいつもお見通しだね。
「先生は?」
「俺ももう疲れた。あいつらに連れ回されてさ」
そう言いながら、先生は私が洗ったものを棚へ戻し始めた。
『あいつら』とは、きっと井関ファンのことだろう。本当は私も井関先生のこと探したけど、その時はもう井関ファンに囲まれていたから。無理して先生に 近づけば、また井関ファンがうるさく言うだけだし。
だけど、まさか井関先生がこうやって来てくれるなんて思わなかったな。