結局、私たちはお互いのタピオカミルクティーを交換して落ち着いた。
少しずつ、少しずつ、先生のいろんな面が知れて嬉しい。
まだまだ私の知らない先生はあって、それでもこうやって近づけている気がして、心が喜んでいるって感じる。
「ふふ」
「なんだよ?」
「先生、本当に甘党なんだね。そう思ったら面白くなっちゃって」
「そうだなー。自分でもビックリすることがあるよ」
「先生お酒飲むの?」
「酒? 酒も好きだけど、飲むとそれだけ食べちゃうんだよな」
「あー、そういう人いるいるー」
「だから、杏みたいに料理が上手いと危険だよな」
「え? どうして?」
「美味しくて、それだけたくさん食べちゃうだろ」
「あはは、そっか。じゃあたくさん作らないようにしないとね」
「……」
「あ……」
一瞬、無言になった先生に、顔を上げた。まるで私が先生にご飯を作ってあげるみたいな言い方。自分の言った言葉に気付いて一気に顔が赤くなる。
「いつか、ご馳走してくれよ」
先生……。
そう言いながら先生は笑うとタピオカミルクティーを口に含んだ。
「……うん……」
私は小さく返事をすると、うつむいた。
それはどういう意味なの?って、先生の言葉を思い返すことが多いよ。
私の気持ちが伝わっているのかな?っ勘違いしてしまうような、そんな先生の言葉に、いつも心が大きく反応してしまう。
そうであってほしいと、いつも心の底から思う。
私は先生の後ろ姿を見つめ、そう願った。
学校へ戻る静かな道に、キュッキュッというキャベツの音が鳴って、私の心臓の音に重なっていった。