ふと見ると井関先生も同じように周りを見回していた。その姿に今度は私がぷぷっと吹き出した。

「なんだよ?」

「だって先生、初めて来たみたいにキョロキョロしてるから」

「だってそうだろ。ここに来たことほとんどないからな」

「そうなんだ。まあ私もそうだけど」

 そう話しているとあるお店の前で先生がピタリと足を止めた。

「鴻茶……こうちゃ? なんて読むんだ?」

「ほんちゃだよ、先生。タピオカミルクティーのお店」

「へえ、タピオカミルクティー? ほんちゃって読むんだ。難しい読み方するな」

「先生タピオカミルクティー飲んだことないの? もう流行って何年も経つよ?」

「タピオカミルクティーは知ってるけど、あえて買って飲みたいかって言われるとそうでもなかったからな。それにお店に来ることもなかったし」

「飲んでみる?」

「え?」

「この間たくさんご馳走になったから、私がおごっちゃう!」

 先生が驚いた顔をして私を見つめた。

「だな」

 そう一言いうと先生は笑った。