「いや、勉強熱心というか、練習熱心というか、みんなは杏が説明してくれた切り方で何度も練習したってことだろ」

「そうだけど……」

「無意識にキャベツを使ってしまったんだ。頑張っていたってことは、怒ることではないよ」

「先生……」

「羽山先生、僕が近くで買ってきますから」

「あ、ですが井関先生、私が明日用意して持ってくればいいことですから」

「いえいえ、キャベツだって案外重たいですし、羽山先生は生徒たちと後片付けをお願いします」

「そうですか……井関先生申し訳ありません」

「……」

 私たちが使ってしまったものを井関先生に買いに行かせるなんて申し訳ないな……そんなふうに思いながら井関先生を見つめていると、突然ミカが私の背中を押した。

「井関先生! 杏も連れて行ってください!」

「え!? ミカ!?」

「だって、近くで買ってくるって言っても、駅前の商店街まで行かないとスーパーも八百屋さんもないでしょ? キャベツ重たいから2人くらいいないと持って帰って来るの大変だし」

「ちょっとミカ!? なんで私……」

「私たちは後片付けしておくから、ね? 杏よろしく!」

 ミカは私のエプロンを外しながら、そう言ってウインクした。

「……」

 なにそのウインク……どうせ私と井関先生を2人にしようと思って、とっさに考えた理由なんだってすぐ分かるよ。ミカはもう……。

 私がブツブツ言っていることも無視し、ミカやみんなはどんどん後片付けを始めていた。井関先生もすでに廊下に出て「どうする?」と言った顔で私を見ている。

 はぁ……もう。

 私は井関先生の後を追って、小走りに廊下を走って行った。