まともに出来たコロッケと、数個の真っ黒なコロッケ。試食タイム。

 市販のコロッケはごく普通の牛肉コロッケだけど、私たちが考えたコロッケは、カレーコロッケを丸くして中にウズラの卵を入れてみた。

「おいしー!」

「うん、美味い!」

「カレーコロッケだけど、ケチャップ・マヨネーズのソースでも美味しいと思うんだけど、どうかな?」

「杏ナイスアイディア! やってみよーよ!」

「篠田さんがこんなに料理が出来るなんて。このコロッケには細か過ぎない、粗みじんな玉ねぎがあっているし、キャベツも繊細だし、料理や味にあった切り方、そういうのが篠田さんにはわかっていたのね」

 戻って来た羽山先生が、試食コロッケを絶賛した。

 そんなに褒められてもなぁ……なんとなく、これくらいの切り方がいいってそう思っただけなんだけど。

「杏にこんな才能があったなんてな。もっと早くだしてれば良かったのに。もったいない」

「先生……」

 井関先生が私の作ったコロッケを食べてる……。

 先生に褒められることが、こんなにも嬉しい。

 料理は昔から得意だったけど、学校じゃする機会ないし。かといって部活に入るなんて、面倒くさかったし。でも、もし……まったく出来ない英語も出来るようになったら、井関先生は喜んでくれるのかな?

「うぇ~、俺のニゲェ~」

 リク先輩が渋い顔をして叫んだ。焦げたコロッケは、リク先輩が食べていたのだ。

「何よっ、リクがいきなり来るから、ビックリして焦がしちゃったんでしょ!」

 ミカの言葉に、みんなの笑い声が響いた。ミカはそんなふうに言いながらも、そっと自分のお皿と、真っ黒なコロッケが乗ったリク先輩のお皿を換えた。