朝は起きると、一番に食事の支度をする。

それが済んだら、掃除に裁縫。

お義母さまの花やお唄の稽古にも付き合って、私も一緒にやったりなんかする。

買い物をしたり、たまにはお茶もしたりなんかして、夕飯を作り、寝る。

お義母さまは優しかったし、お祖母さまもいつもにこにことしていた。

しょっちゅうおはぎや羊羹なんかもくれたりして、みんなで一緒に食べた。

お義父さまも穏やかで、にこやかに笑うよい人だ。

私はすっかりこの家に満足していた。

夜になると、自分の部屋へ戻って布団に入り横になる。

いつも私がそうしてから、しばらく経って晋太郎さんはやってきた。

嫁に来た翌日自分で布団を敷いた時、なんとなく気恥ずかしくなって、少し離して二つの布団を敷いた。

その夜はなかなか晋太郎さんは現れなくて、いつの間にか私は眠ってしまっていた。

翌朝目を覚ますと、その人はもういなくて、もっと離された布団と布団の間に、間仕切りとして大きな一枚板の衝立が置かれていた。

晋太郎さんの布団にはほんのりと体温が残っていて、ここで寝ていたことは間違いない。

それ以来なんとなく、ずっとそうやって床を整えている。

晋太郎さんは思っていたよりも、ずっと静かな人だった。

会話はほとんどない。

用があって外に出かける以外は、ほとんど全ての時間を、屋敷の北の奥で過ごしていた。

私は家の中で時折すれ違うこの人の姿を、遠くから見上げるだけの日々を過ごしている。

それを寂しいとか意外だとは思わない。

父親同士が家のためを思い、本人の意思とは無関係に決めた結婚だ。

見ず知らずの者同士の結婚なんて、最初はきっとこんなものなのだろう。