君が僕にくれた余命363日



成田さんの命はもう残り少ない。

彼女に触れることが怖い。

また減っているのではないかと不安に駆られる。

成田さんには僕が何を言っても、たぶん他の誰が言っても、自分の意思を曲げない。

本当に頑固な人だ。

もっと成田さんを思う周りの人の気持ちも考えてくれよ。

そう思っても、成田さんは変わらないんだろうな。


「話聞いてる?」
「聞いてない」
「おい!」


成田さんから鋭いツッコミの手が飛んでくる。

肩を叩かれ見える数字は【13.51】と浮かんで見えた。

あの日以来、成田さんは余命を渡していない。

今日もそれが確認できてホッと胸をなでおろす。

成田さんは有限だと知っていながら、ポンポンと自分の余命を渡すから。

とりあえず2週間以上、誰にも渡さないことができている。


よかった。
このままいってくれればいいんだけど。


「だからね、日野花純ってすごくあってるよね」


授業が終わってすぐに振り返り声をかけてきたかと思えば意味のわからないことを言っている。

授業中、ノートに書いていたのかその字面まで見せてきた。


「発音も羅列も綺麗じゃない?」
「勝手に僕の苗字とらないでよ」
「とってないよ。おそろいにしよ」


ニコッと笑う成田さんを真顔で見つめる。


「……プロポーズ?」
「ちょっと、瑞季くんってば」
「何?」
「女の子にすべて言わせないの!」


両手で顔を隠している成田さんがおかしくて、吹き出してしまった。

自分で言って自分で照れるとか余計に恥ずかしいだろ。


「成田さん」
「……何?」


まだ照れているのか指の隙間から僕を見る。

その手をどけて、顔を隠すものをなくさせた。

いつもは成田さんにやられっぱなしだから、今がチャンスだと思った。


「かわいいね」
「へっ!?」


驚いたように声を上げた成田さんにクスっと笑う。
けど、成田さんは頬を膨らませていつものようにわざとらしく拗ねる。