君が僕にくれた余命363日



「わたしの自己満だからいいんだよ。わたしが、人が死ぬのを見たくないから、見ないために渡しただけ」


成田さんは変わらず微笑んでいる。
優しく、儚く。


「この世に絶望して死のうとしたけど、わたしのせいで死ねない。呪いみたいでしょ?」
「…………」
「自殺なんて馬鹿しようとするからだ。わたしの勝ち。頑張って1年生きろ」


彼女はいたずらに舌をべっと出す。


「ざまあみろ、ってね」


成田さんは成田さんだ。

でも、僕はこんな成田さんは好きじゃない。

モヤモヤする。
ムカムカする。


「わたしは大丈夫だよ。これでいいんだ」


笑顔の成田さんに僕はどうしても笑顔なんて返せるわけがない。

成田さんの考えも理解できるはずがない。

彼女が余命を渡すことができるからと言って、誰にでも渡せばいいってものじゃないと思う。

自殺しようとした人に渡したって気分よくないじゃないか。

巻き込まれた人だって気の毒だけど、あれが神が決めた運命だったんだ。

最初からそうなると決まっていたのだから手を加えるべきじゃない。


「やめなよ」
「やめないよ」


僕の言葉なんて聞いてくれやしない。
頑固な君。


「救える命は救いたい。もう決めてるから」


まっすぐな瞳。

救える命は救いたい。
気持ちはわかるよ。

だって、僕も同じ気持ちだ。

僕も救える命を救いたい。
君の命を救いたい。
君に生きてもらいたい。

そう強く願っていると気づいたから。



他の誰でもない、僕は、成田花純に生きてほしい。