「瑞季くん」
「…………」


大きな瞳に捉えられ見返し続けることに我慢ができなくなり、顔を背けた。

これでは認めているのと変わらない。

僕はどうしたら……。


「ひとりで、抱え込まないで」
「……え?」
「瑞季くんひとりで抱え込まないでよ。怯えたように震えてさ。そんなに思いつめないで」


震えてる?

成田さんのセリフにひっかかって右手を体の前に動かす。

視線を落とすと震えていた。

成田さんが手を伸ばし、僕の震える右手を包み込んだ。

余命が見える。
怖い。

成田さんだってもう少ないから。

それでも、僕がさっきの女性の余命を伝えたらきっと渡すのだろう。

怖い。

人が死ぬのも、彼女の余命が減ることも。

怖くてたまらない。


「わたしにも背負わせて」
「でも……」
「わたしの命はわたしが好きなように使いたい」
「成田さんはそうでも、僕は……」



―――ドシャ!!!!


言葉の途中で鈍い音が響いた。

ハッとそちらを向けば、先ほど拾ったばかりの荷物が再び地面に落ちていた。

倒れている女性。
その隣に男性。

息が詰まる。

今日いちばんの嫌な心音が刻まれる。


「おい!人が落ちたぞ!」
「救急車!」


マンションの住民や近くにいた人が騒ぎ出し、ちらほら人が集まってくる。

動けなくなる僕とは違い、成田さんはすでに走り出していた。

それを認識して僕も無理やり足を動かす。

成田さんのあとをついて、倒れている女性と男性に近づいた。