君が僕にくれた余命363日


「瑞季くん」
「…………」


大きな瞳に捉えられ見返し続けることに我慢ができなくなり、顔を背けた。

これでは認めているのと変わらない。

僕はどうしたら……。


「ひとりで、抱え込まないで」
「……え?」
「瑞季くんひとりで抱え込まないでよ。怯えたように震えてさ。そんなに思いつめないで」


震えてる?

成田さんのセリフにひっかかって右手を体の前に動かす。

視線を落とすと震えていた。

成田さんが手を伸ばし、僕の震える右手を包み込んだ。

余命が見える。
怖い。

成田さんだってもう少ないから。

それでも、僕がさっきの女性の余命を伝えたらきっと渡すのだろう。

怖い。

人が死ぬのも、彼女の余命が減ることも。

怖くてたまらない。


「わたしにも背負わせて」
「でも……」
「わたしの命はわたしが好きなように使いたい」
「成田さんはそうでも、僕は……」



―――ドシャ!!!!


言葉の途中で鈍い音が響いた。

ハッとそちらを向けば、先ほど拾ったばかりの荷物が再び地面に落ちていた。

倒れている女性。
その隣に男性。

息が詰まる。

今日いちばんの嫌な心音が刻まれる。


「おい!人が落ちたぞ!」
「救急車!」


マンションの住民や近くにいた人が騒ぎ出し、ちらほら人が集まってくる。

動けなくなる僕とは違い、成田さんはすでに走り出していた。

それを認識して僕も無理やり足を動かす。

成田さんのあとをついて、倒れている女性と男性に近づいた。