「どうしたの?」
僕の異変に気づいたのか成田さんが顔を覗き込んでくる。
「顔真っ青だよ」
そう言った瞬間に、自分で気づいたのかハッとした表情になる。
成田さんには隠さないといけない。
気づかれてはいけない。
でないと成田さんはぜったいに救おうとするから。
自分の命を削ってでも。
「……早く行こう」
「待って。瑞季くん様子が……」
「何でもない。暑いしアイス食べよ。僕が奢るし」
「でも……」
「いいから!」
つい声を荒げてしまう。
やばい。
こんなの、何かあるって言っているようなもんだ。
「ご、ごめん。ちょっと暑くてイラついてた」
誤魔化そうとすぐに謝罪をする。
落ち着け。
僕が落ち着かないと。
「瑞季くん」
「何?」
「……さっきの女性に触れてたよね?」
「……触れてないけど」
心拍数が上がりすぎて口から心臓が出そうだ。
成田さんと目を合わせることができない。
こういう時の成田さんは鋭いと知っているから。
「触れておけばよかったな。美人だったし」
「……瑞季くんって嘘下手だね」
「……嘘じゃない」
「あの人、死ぬの?」
「…………」
僕の前に回り込んでくる。
無理やり視線を合わせて表情を読み取ろうとしてきた。
何も言わずに成田さんを見つめ返す。
これがいちばん、わかりにくいと思ったから。