君が僕にくれた余命363日



「どうしたの?」


僕の異変に気づいたのか成田さんが顔を覗き込んでくる。


「顔真っ青だよ」


そう言った瞬間に、自分で気づいたのかハッとした表情になる。

成田さんには隠さないといけない。

気づかれてはいけない。

でないと成田さんはぜったいに救おうとするから。

自分の命を削ってでも。


「……早く行こう」
「待って。瑞季くん様子が……」
「何でもない。暑いしアイス食べよ。僕が奢るし」
「でも……」
「いいから!」


つい声を荒げてしまう。
やばい。

こんなの、何かあるって言っているようなもんだ。


「ご、ごめん。ちょっと暑くてイラついてた」


誤魔化そうとすぐに謝罪をする。

落ち着け。
僕が落ち着かないと。


「瑞季くん」
「何?」
「……さっきの女性に触れてたよね?」
「……触れてないけど」


心拍数が上がりすぎて口から心臓が出そうだ。

成田さんと目を合わせることができない。

こういう時の成田さんは鋭いと知っているから。


「触れておけばよかったな。美人だったし」

「……瑞季くんって嘘下手だね」
「……嘘じゃない」

「あの人、死ぬの?」
「…………」


僕の前に回り込んでくる。

無理やり視線を合わせて表情を読み取ろうとしてきた。

何も言わずに成田さんを見つめ返す。

これがいちばん、わかりにくいと思ったから。