君が僕にくれた余命363日


「あっ!」


その時、前のほうで声が聞こえ成田さんはすぐに顔をそちらに向けた。

僕も成田さんの視線を追い見る。

そこには30代くらいの女性が歩道に荷物ぶちまけてため息をついていた。

袋が破れている。

荷物が重すぎたのだろう。


「大丈夫ですか?」


成田さんは気づいた瞬間駆け寄り、一緒に荷物を拾っていた。

だから僕も続いて荷物を拾う。


「ごめんね、ありがとう」
「手伝いましょうか?」

成田さんの提案に微笑みながら首を横に振る。


「大丈夫よ。家もうすぐそこだから」


拾った荷物を袋に入れると、子どもを抱っこするように持つ。

大荷物で大変そうだけど、女性が目線で示した家は道路の向こう側のマンション。

本当に『すぐそこ』の場所。

それに安心したのか成田さんも納得して食い下がることはなかった。


「じゃあね。本当にありがとう」
「どういたしまして、です!」


成田さんの元気な声。
僕は軽く会釈をするだけ。

女性も同じように会釈をした時、上に乗っていたシャンプーの詰め替え袋が落ちそうになった。

気づいて手を伸ばし押さえる僕と、同じように押さえようとした女性の手が触れた。


「っ、」
「また危なかった。ありがとね」
「……いえ」


女性の笑顔を見られなくて視線を逸らした。

触れた時に見えた余命。


【0】


どうして出会ってしまうんだろう。
意外と【0】の人に出会う確率が高い。

この能力があるからこそ、出会ってしまうのだろうか。

歩いていく女性の後ろ姿を振り返って見つめる。

もうすぐなのか?

いつなのかわからないけど、胸騒ぎがする。

今ここで起こるのではないか。

心臓がありえないほど速く動き出して、全身に血が駆け巡る。