「こんだけで照れるなんて日野瑞季くん、かわいいね」
勝手に照れていることにされているけど、そういうことにしたほうがこの場合は都合がいい。
「そうだね。ごめん、恥ずかしい」
言葉にするほうが恥ずかしいな。
僕の言葉を聞いた成田花純は満足したように口角を上げて笑った。
わかってくれた、か?
「はい、握手」
「いやいやいや!何でそうなるの?」
僕の話を聞いてなかったのか。
恥ずかしいところを無理して言葉にした僕の努力は何?
「もう、日野瑞季くんしつこいよ」
それはこっちのセリフなんだけど。
不可抗力で触れてしまうことは仕方ないとしても、自ら触れるなんて自殺行為みたいなものだ。
傷つきにいくようなものだ。
知りたくないのに……。
「はい」
左手が僕の右手を掴み無理やり手を握られる。
けど握手する前の触れた瞬間から見えていた。
【22.105】
こんなに元気なのに、あと22年しか生きられない。
笑顔で僕の手を握っている成田花純。
今は温かい手だけど、あと22年後には冷たくなって動かなくなる。
早い。早すぎる。
ほらやっぱり、人の余命なんて知ったっていいことない。
ゆっくりと手が離される。
離れた時に見えなくなった数字。
だけど、僕の脳内にはこびりついて離れなくなってしまった。
「日野瑞季くんの手、冷たいね」
こんな能力があるんだ。
常に緊張して冷たくなってしまっても不思議ではないだろう。
まぁ、僕の場合はただの冷え性でもあるのだけど。