君が僕にくれた余命363日



「こんだけで照れるなんて日野瑞季くん、かわいいね」


勝手に照れていることにされているけど、そういうことにしたほうがこの場合は都合がいい。


「そうだね。ごめん、恥ずかしい」


言葉にするほうが恥ずかしいな。

僕の言葉を聞いた成田花純は満足したように口角を上げて笑った。


わかってくれた、か?


「はい、握手」
「いやいやいや!何でそうなるの?」


僕の話を聞いてなかったのか。

恥ずかしいところを無理して言葉にした僕の努力は何?


「もう、日野瑞季くんしつこいよ」


それはこっちのセリフなんだけど。

不可抗力で触れてしまうことは仕方ないとしても、自ら触れるなんて自殺行為みたいなものだ。

傷つきにいくようなものだ。

知りたくないのに……。



「はい」


左手が僕の右手を掴み無理やり手を握られる。

けど握手する前の触れた瞬間から見えていた。


【22.105】


こんなに元気なのに、あと22年しか生きられない。

笑顔で僕の手を握っている成田花純。

今は温かい手だけど、あと22年後には冷たくなって動かなくなる。


早い。早すぎる。


ほらやっぱり、人の余命なんて知ったっていいことない。

ゆっくりと手が離される。

離れた時に見えなくなった数字。

だけど、僕の脳内にはこびりついて離れなくなってしまった。


「日野瑞季くんの手、冷たいね」


こんな能力があるんだ。

常に緊張して冷たくなってしまっても不思議ではないだろう。

まぁ、僕の場合はただの冷え性でもあるのだけど。