かくれんぼをした日から10日経った。

今日の放課後はここ最近ではめずらしく成田さんとふたり。

ジローと木下さんはそれぞれに予定があるみたいだ。

それなら僕も帰っていいのだけど、成田さんがそれを許してくれない。


毎日のように放課後を過ごしていたふたりが、今日は予定があると言った時。

『じゃあ、瑞季くんとわたしのふたりだね』

と当然のように言い放った。


言ったもん勝ちで、僕は断ることができなかった。

予定があることにしようとしても、僕は他に友達がいないからすぐ嘘は見破られる。

体育で組んで以来話すようになったクラスメイト3人組もいるけど、その3人はサッカー部だから放課後は忙しい。

断る理由ができない。

まぁ、家に帰っても寝るだけだしいいけど。


「郵便局寄らしてね」
「何するの?」
「切手買うの。手紙を送るんだ」
「へぇ」
「……終わり?」
「うん」
「もっと聞いてよ」
「聞かなくても話すじゃん」
「でも聞いてほしいじゃん。話さなかったらどうするの?」


どうするのって、そんなの決まってる。
僕のスタンスはいつだってそうだ。


「どうもしないよ」
「うわ、瑞季くんって感じだわ」


成田さんが引いてる。
けど、成田さんにこんな反応されるのはやっぱり心外だ。

僕が変みたいじゃないか。

どちらかと言えば、成田さんのほうが特殊だというのに。


「はいはい」
「余裕ぶっかましてるね」
「そうでもないけど。成田さんは思考がぶっ飛んでるね」
「出たな、毒舌瑞季くん。わたしは悪に屈しない」
「勝手に悪者にしないでよ」
「悪者は退治する!」
「それは面倒だな。僕は退散するよ」