君が僕にくれた余命363日


ここまで回避したんだからもう大丈夫だろう。

だけどその夜、おばちゃんの家で火事が起こり、旦那や息子は助かったけどおばちゃんだけ帰らぬ人となった。

僕なりに精いっぱい頑張った結果が、運命を変えられないという事実を証明した。

その時の光景を今でも鮮明に思い出せる。

僕の努力を嘲笑うように、パチパチと音を立てながら天に向かって上がる炎。

煙が僕の心にまで入ってきて真っ黒になる。


「変えられなかった」


久しぶりに思い出してむせ返りそうになる。

苦しい。呼吸の仕方を忘れる。

死、が怖い。


「じゃあ、なおさら周りの人と関わらないとね」
「……え?」
「大切にしないと」


にこっと微笑む成田さんは僕の今の感情と真反対。

どうしてこんな時に笑うんだ。


「死を怖く感じることは悪いことじゃないよ。瑞季くんは必死に、生きてるんだね」


優しすぎる温かい声に何も言えなくなった。

確信をもって言うから、そうなのかもしれないと思いそうになる。

もう、成田さんのペースだ。


「……どうだろうね」


間をあけてから曖昧に返す。
やっぱり認めるだけじゃ癪だから。


「どうしても変えたいならわたしが変えるよ」


それはもしかして、と成田さんの思考が読めてしまった。


「瑞季くんが見て、わたしがその人にあげたらいい」


やっぱり。

成田さんの考えが容易に読めたから、次の言葉は準備してあった。


「却下」
「何で!?いい考えだと思ったのに。わたしたちぴったりじゃん」
「どこが。全然よくないから」
「変えることができたら、瑞季くんの不安は減るんじゃないの?」
「減らない」


もう変えられるところは見せてもらった。

だけど、同時に成田さんの死が近づいているところも見ている。

よくないよ。


「もうあげないほうがいい」