君が僕にくれた余命363日



「……帰ろうかな」
「ごめんごめん。でもわたしは本当に嬉しいんだよ」


腰を浮かそうとする僕に、今度は手首を掴んで引き止める。

微妙にあいていた間もその時に詰められた。

僕に気づかれた途端、触れてくるとかいい性格してるよ。

隠すのか隠さないのか、どっちなんだよ。

まぁ、成田さんの性格上、隠すことは難しいのだろうけど。

それよりも『嬉しい』の言葉の意味のほうが気になった。


「何が嬉しいわけ?」
「そんなの、瑞季くんが友達と仲良くすることがだよ。わたしや美玲、ジロちゃんやクラスメイトとも」
「仲良い?」
「仲良いよ!楽しく過ごせていたら、それは仲良いんだよ」
「そう」
「ほんと素っ気ない感じ出しちゃって。図星なんでしょ?」


成田さんはどうしていつもこんなに自信に満ち溢れているのか。

いちばん楽しそうなのは成田さんだ。


「瑞季くんの触れた人の余命が見える能力のせいで、人と距離をあけちゃうのもわかる」


いや、僕はわからない。
成田さんが『わかる』ことがわからない。

だって考え方が違うのだから、きっと成田さんは僕の気持ちをわかっていない。

この話をした時、成田さんは僕と反対の意見を述べたのだから。


「でもね、瑞季くんの能力はすごいよ。余命が見えたら、その人のこと守れるかもしれないんでしょ?」


これは僕も思ったことがある。

守れるのではないか。
事前に知っているのだから救えるかもしれない。


「……したことあるよ」

だけど、そんなことはなかった。

僕の能力はすごいものではなかった。


「余命が0の人を守ろうとしたことはある」

あるけど、

「……救えなかった。同じ隣保のおばちゃんが持病はないのに余命が少ないと知って、事故なら防げると思った。理由をつけて近くにいて、運命を変えようと思った」


無理して世間話なんかをして、おばちゃんの近くで行動を見張るようにしていた。

車がいきなり前をすごい速さで通ったり、歩道橋で足を滑らせて落ちそうになったり、不幸なことが起こった。

だけど、すべて何とか回避した。

僕がいないと危なかったことばかり。

事故は防いだ。

そして家に入るのを見て、安心して僕も家に帰った。

僕はこれで救えたと思った。

【0】のままだったけど、今日を乗り越えればきっと変わる。