「あ……」
「何?」
「いや、ちょっと思い出したというか。でもさ、わかった」
「何が?」
「試してみればよくない?瑞季くん余命見えるんだから」
「そんな軽々しく試すようなものじゃないだろ」
「いい案だと思ったのに」
「そうでもないよ」


もしそれで、1日とかじゃなくて1年渡してしまったらどうするんだ。

1日だって貴重だというのに。

こんなこと、試すようなものではない。


「あともうひとつ」
「まだあるの?」


成田さんは嫌そうにするけど、この際だから気になることはすべて聞いておきたい。


「死んだ人にしか渡せない?」
「瀕死の人や死んだ人、動物にしか使ったことない。試す?」
「いや、それはいいって」
「そっか。でも、なんとなくわかるんだよね。この人に必要だって」
「見えるの?」
「直感かな」


成田さんはそれだけで生きているような気がするな。
直感だけで。


「ふーん」
「瑞季くんから聞いてきたくせに、何でそんな素っ気ない返事なの」


そう言われても、これが今の僕の精いっぱいだった。

成田さんは何を言っても茶化す。

意志は何ひとつ変わらないらしい。

けっこう頑固だということはすでに知っているから。


「べつに」
「もう、瑞季くんは相変わらずだな。でも瑞季くんが心開いてくれてうれしい」
「開いてないけど」
「え?開いてないのに、こうして一緒にかくれんぼしてるの?」
「…………」


返す言葉がない。
けど、にやついている成田さんにはむっとする。