僕の感情を作るとかなんとか言っていた成田さんの思い通りになっているのが僕として不服。

だから認めているけど、成田さんに認めていることを伝えるのは悔しくて素っ気なくした。

成田さんはそんなの気にしていない様子だけど。


「さっきの体育でも、クラスの男子と話してたじゃん」
「見てたの?」
「うん。女子もハンドボール投げと50メートル走だったからグランドにいたし」


あんまり意識していなかったから気づかなかった。

少し離れたところでやっていたこともあるし、クラスメイトに話しかけられてテンパっていたこともある。


「瑞季くん、変わったね」
「え?」
「前までは距離を置いてたのに、普通に話してたから」
「あ、まぁ、話しやすかったというか……」
「いいことだよ。時間は有限。一瞬で過ぎちゃうんだから、今しかできないことするべき」


何それ、って笑い飛ばしたいけど、成田さんが言うと重みが違う。

時間は有限。

僕はその期限を知ることができて、成田さんの期限はもう20年もない。


「まぁ、いちばんに友達になったのはわたしだけどね。瑞季くんのおもしろさを見抜いたのもわたし」


ぺらぺらとひとりでしゃべっている横顔を見る。

違和感はあった。
不自然にあいた僕と成田さんの距離。

いつも距離が近くてボディタッチが多い成田さんらしくない。


「これから瑞季くんに友達がたくさんできても、いちばんはわたしだもんね。でも、たくさんの人と仲良くして……」

「……いつ?」


成田さんが話している途中、僕から彼女に触れた。

肩に手を置いた瞬間に見えた数字。


【15.80】


昼休み終わりに触れた時から3年も減っている。

いつ使った?
こんな短い時間に使う場面なんてあったか?


「………えへっ」


笑って誤魔化そうとする成田さんだけど、納得がいかない。

誤魔化されたりなんてしない。


「虫でも死んでた?」
「さすがに虫には使ったことないよ」
「じゃあ何?」
「瑞季くんはわたしのことが気になる?」
「そういうのいいから」


茶化そうとする成田さんにも乗らない。

どうしてそんなに笑ってるんだ。

何でそんな簡単に、自分の命を削るんだよ。